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 気候、時事問題、読書、料理・・・生活の中で感じる、取りとめのない交信を公開。  読者のあなたと、共感しあえたら最高です!
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 勿論四季のあるイラクであるが、夏の暑さと砂嵐は初めての日本人にとって最大の脅威となる。
 夏とは4月から10月である。

 アマラはバグダッドから南へ500キロ離れたイラク第二の都市バスラの近くにある。
 イランとの国境の町である。

 国境ということが大きな意味を持つ。
 即ち、地下油田が国境を跨いでいる場合、一方が先に掘削油道を作ってしまうと、反対側からいくら掘削しても油が噴出しない。
 従って、両国共、国境を挟んで掘削競争ということになる。

 偵察機が上空を旋回しているなどということもよくあることである。
 このような状況下では一日も早く設備が完成した方が勝ちである。
 設備請負会社に対する遅延ペナルテイは一日700万円というのは法外な話ではない。

 建設に携わる我々は、4月~10月の炎熱地獄の下で頑張らざるを得ない。
 若かった。
 10時~14時の最高気温は60度にもなる。
 20分も立ってはいられない。

 そして、もっと工事作業に手痛いのが砂嵐である。
 5メートル先も見えなくなり、作業中断となる。

 休憩時間に出されるチャイ、即ち非常に濃く煮出した紅茶に砂糖をたっぷり入れた飲物である。
 最初は日本人誰もが遠慮するが、あの厳しい気候の中で暮らしていると自然に飲むようになる。
 工事は午前10時までと午後2時から5時までということになる。
 日程遵守のもと、月150時間残業に文句をいう社員はいない。
 こういう気候の中でも日本人は気を抜かず、皆ガリガリになり、ベルトは緩くなってしまう。

 厳しい労働条件ではあるが、太陽が沈む風景には安堵感を覚え、日本人村の銭湯が待っている。
 素材の不十分さはあるが、日本人コックの作ってくれる日本食、イラクビール、密輸されたウイスキーなどは、格別の味がする。
 正月には特別に地中海の鮪一本を空輸し皆で素晴らしい味を堪能した。

 又、密輸アルコールでよいところは、防腐剤が入っていないせいか、本物の味を楽しめるということである。
 ドイツのレーベン・ブロイ、スエーデンのツボルグ、カールスバーグ、ベルギーのハイネケン、イタリアのキャンテイ・ルフィーノという赤ワイン、スコッチのホワイト・ホース。
 それから太陽の日差しの味がするレミー・マルタン。
 これらはイラクで憶えた味である。

 バグダッドと違い、辺境の地では自然の景色の移り変わりも驚かせるものがある。
 一番好い季節は春、即ち3月である。
 イラン高原からの雪融け水がジワジワと土漠の地を湿らせ始め、みるみるうちに、緑の絨毯と小花の海になる。
 砂漠とは異なる点である。

 何もない平原の先に地平線が一筋見える。
 真っ赤な太陽はとても大きく、大地の雄大さを感ずることができる。

 毎日毎日カレンダーの日付を消し、帰国の期待が自分を支えていた。
 そんな大変な場所ではあったが、今一度あの太陽を眺めてみたい。

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